今年でデビューして満十年になる。数字には拘らない性質だけれど、ひとつの節目かな、と思う。

これから十年先、何をしているかは全く想像できない。だからこれからの5年のことを考えようかと思う。 これからの5年、今までとは少し違うことをやってみようか、と。たとえば、短編を書いてみること。

商業出版ではファンタジーの短編というのはあまり需要がない。でも出版出来るかどうかは別として、とにかく書いてみようかな、と思う。形式的にも、内容的にも、商業向きでないものもひっくるめて。 過去十年、自分のためだけに書くということはしてこなかった。読んでくれる人がいるということが書くことの支えであったから。もちろん、自分の好きでないものは書けないから書かない。商業出版で書くものは、当然自分でも好きな素材や内容になっている。けれど、「自分の好きなものだけ」とは違う。

それはお客さんが来る日に作るパーティ料理と、自分ひとりの日の夕ごはんの違いなのかもしれない。

家に来るお客さんに出す料理は、もちろん自分でも好きなものを作る。でも、自分ひとりだったらたぶんその料理ではなく、違うものを作る。好きだけどお客さんには出しにくい料理、たとえば納豆カレーみたいなものを。 納豆カレーみたいな短編。ファンタジーかもしれないし、SFかもしれない。どちらの陣営からも容認されないものかもしれない。何らかの形で発表するかもしれないし、しないかもしれない。未だ何も決めていない。でも、とにかく始めてみようかと思う。始めようと思わなければ何も始まらない。

5年後に、何編かでも形になっていることを願って、とりあえずここに書き記しておこうと思う。でないと、書こうと思ったことも忘れてしまうかも知れないから。

そういえば5年ほど前、活字倶楽部のインタビューで「まだ作家になったような気がしない、十年経てばそう思えるかも」と答えた気がするが、未だにあまりそんな気はしていない……